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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3352号 判決 1950年6月10日

被告人

巽末次郞

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役壱年に処する。

理由

弁護人伊達実夫の控訴趣意第一点について。

しかし、原判決挙示の証拠を綜合すれば判示第一の(一)及び(三)の事実(起訴状引用)は十分認められる。右原判決認定の事実によれば被告人は永野菊太部から同人の衣類七点を担保に金借を依賴され、芝村ツルに之を担保に差入れて金七千円を借受けながら、永野に対しては金四千円を借入れたと称し差額金三千円を自己に領得し、更にその後芝村ツルに右債務返済のため辻村良三から右衣類七点を担保に金一万円を借受けながら差額金三千円は永野に交付せずに擅に自己のために費消したと云うのであつて、右金員はいずれも所論のように被告人名義で第三者から借受けたものであつても、被告人と永野菊太部との関係においては同人の依賴に基きその所有物を担保に借受けた以上は同人の委任事務の処理上受取つた金銭であるから当然委任者たる永野の所有に帰属し、特に自由使用を許された場合でない限りは私に之を使用することはできないのであつて、判示のように右差額金につき不正領得の意思を外部に表現した以上横領罪が成立するのである。

(註 原判決は量刑不当にて破棄自判)

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